呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 ハンナは満足し、穏やかな笑みを浮かべた。静かに眠るように、だんだんと意識がぼやけていく。

「~~ナッ」

 突如、狭くなった視界の端が騒がしくなった。誰かが半狂乱で暴れている。

(誰かしら? もしかしてエリオットさま?)

 最期に愛する人の顔を目に焼きつけておきたかったけれど、もう自分の身体が自分のものではなくなってしまったみたいで、自由にならなかった。

 ハンナの視界に映るのは、風に揺れる虹色の花たち。この世のものとは思えぬほどに美しい景色だ。

 そのうちの一輪が突如、小鳥に姿を変えた……かに見えたけれど違った。

 虹色の花の向こうから、虹色の羽を持つ鳥が飛んできただけだった。

(あれはエリー?)

 またすぐに会えるわ。その言葉どおり、エリーがやってきてくれたらしい。

 ハンナはふっと唇の端で笑む。

(エリーの正体は死神だったのかしら? エリオットさまでなく、私のところへ来てくれてありがとう)

 エリーは光を連れてきた。

 辺り一帯、目がくらむほどのまぶしさに包まれる。泣き叫ぶエリオットの姿も、彼と揉めているらしいハーディーラも、そして虹色の小鳥も、ハンナにはもうなにも見えない。
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