呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 ハンナは小首をかしげる。

「どういうことでしょう? もしかして私、また長く眠っていたりしたのですか」

 目覚めたときの状況とエリオットの反応が、あまりにも以前と酷似しているので自然とそんな疑問が口をついて出た。

 けれど、答えを聞く前に自分で気がつく。

「いえ、違いますよね。エリオットさまもナーヤも変わっていないもの」

 ふたりの姿はハンナの記憶のままで、年を重ねた様子はない。

「ハンナが意識を失ったのはゆうべのこと。今は翌日の昼だ」

 ナーヤの後ろからエリオットが説明する。

(やっぱり、今回は長く眠ってしまったわけではないのね)

 自分は、そしてエリオットはいったいどういう状況なのだろう?

 困惑するハンナの視線が彼女――この場にいる人間で唯一見知らぬ少女のもとで止まる。

「あの、あなたは誰なの?」

 少女はにっこりと天使の笑みを浮かべる。

「私はエリーよ」

「エリーは……虹色の小鳥につけた名前だけど」

 エリーはオスワルトの恩人ならぬ、恩鳥だ。

(あの子のおかげで魔獣を森に帰すことができたんだもの。会えたら、お礼を言いたいけれど……)

 少女がチラリとハーディーラに視線を送る。

「そこのコウモリさんとおんなじ。普段は小鳥の姿で過ごすのが好きなの。だからこの姿で会うのは初めてね、ハンナ」

 ハーディーラと同じ。その言葉の意味するところに、ハンナはゴクリと喉を鳴らす。

「つまり、あなたは――」
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