呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「眠っていたこと? 君のせいじゃない。すべては、あの白豚のせいだ。いや、それは豚に失礼だな。白豚以下の分際で君を娶っておきながら、とんでもない大罪を……」

 白豚とは、夫であるジョアンのことだろうか? たしかに彼はブクブクと肥えてはいたが……。

「あの、夫はどうしているのでしょう? 彼が私をオスワルトに追い返したのですか」

 十五年も眠り続ける妻はいらないと返品してきたのだろうか。彼なら、やりそうではある。

「白豚は死んだよ。そもそも、君とあいつの結婚は無効化された。あいつは夫でも、元夫でもない、ハンナとはなんの関係もない、ただの豚だ」
「し、死んだ?」

 彼は太りすぎではあったが、とても元気な人で病とは無縁だったと記憶している。

(愛人のリリアナとはたいそうお盛んでしたし……)

 十五年の間に大病でもしたのだろうか。

「あぁ。君が眠りについてすぐ、急病でね。天罰だろうからハンナが気に病むことではない」
「気に病むことはございませんが……」

 ジョアンには悪いが、死んだと聞いてもまったく悲しくはなかった。友人の友人の、そのまた知人が死んだ、その程度の感傷しか湧かない。

「では、婚姻の無効化とは?」
「君たちは白い結婚だったのだろう。無効になるのが当然だ。ハンナはナパエイラとは縁もゆかりもない人間になった。だから、眠る君の身体はこのオスワルトに戻されたのだ」
「な、なるほど」
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