呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「実際、私にはもうクロを完全に使役できるほどの力は残っていなかった。だから、クロがハンナに魔法を使おうとしている場面を見て焦った」

 なるほど、それでエリオットは半狂乱になっていたのか。

 クロはそこで、むぅと不機嫌そうに唇をとがらせた。

「ところがだ! この女がいきなり邪魔してきたんだよ」

 ハーディーラはルミエルネを指さす。彼女はうふふと楽しそうに口元をほころばせる。

「だって、コウモリさんの魔法はずいぶんと遅いんだもの。私ならまばたきひとつで終わるのに」
「うぐぐ……」

 彼女は少女の姿をしているが、実際には三百五十歳でハーディーラの倍も生きているベテラン精霊らしい。

「光の精霊は六大精霊の筆頭だ。もっとも力が強い者が君臨する」

 ハーディーラのその言葉に、えっへんと彼女は胸を張る。

「そうよ。私はかわいくて強いの! だからね……」

「対価はなしで、エリオットの寿命を元どおりにしてあげたわ。私の魔法はね、人々の愛とか幸せとか、そういうものがパワーになるの。ハンナとエリオット、ふたりの愛の力がハッピーエンドを引き寄せたのよ!」

 キラキラした笑顔でそう語るルミエルネを横目に見て、ハーディーラはケッと顔をしかめる。

「いい話っぽくまとめてるがなぁ……こいつの魔力ははっきり言ってチートだ。お前らの愛が吹けば飛ぶ程度の軽さでも、エリオットの寿命の操作くらい余裕だぞ」
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