呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「えぇ? そんな素晴らしい魔法があるなら私にもかけていただきたいです! ついでに、この邪魔で仕方のないお肉も消し去ってくれないでしょうか?」

 ナーヤは自分のおなかをムニッとつまみ、憎らしそうにそこをにらんだ。

 たしかに……初めて会ったときよりさらにひと回りほど、彼女の身体は成長したように思う。頼りがいと包容力も比例するように増しているので、ハンナにとってはありがたいことだったが。

ナーヤはハンナをチラリと見て、小さくため息をつく。

「う~ん、でもやっぱり魔法の力だけではないですよね。王妃さまは私みたいに、朝からステーキを三枚食べたり、夜中にケーキ食べ放題パーティーを開いたり、していませんものね」
「ナーヤ。それは私だけではなく、世のほとんどの女性がしていないと思うわ」

 クスクスと笑い合うふたりの背中に「お母さま!」という元気な声が届く。

 王宮の正殿のほうから、こちらに向かって少年が駆けてくる。アンジェラの兄、エヴァンはもう六歳になった。

「おかえり、エヴァン」

 家庭教師による授業が終わったのだろう。

「お母さま。見て、これ。僕が魔法で咲かせた花だよ」

 エヴァンは背中に隠していた小さな花束をハンナに差し出す。

 深紅と白の二色の花びらが美しい、大輪の花だ。

「世界で一番美しいお母さまに、よく似合うと思って。もらってくれる?」
「もちろんよ。ありがとう」
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