呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 ナパエイラという国家に恨みはないが、ジョアンとの婚姻の事実が消えたことは少しばかり嬉しかった。

 だが今、重要なのはそこではない。ジョアンなど、どうでもいいことだ。

「すみません、話がそれてしまいましたわ。今、考えなくてならない問題は私が王宮に、エリオットさまの私室にいるということです」

 気になることはまだまだあるが、そんなものはあとで構わない。

 ハンナは一刻も早く、ここを出ていかなくてはならない。国王の私室、本来なら妻となる女性以外は立ち入れない場所なのだから。

「エリオットさま。私の身体はもうなんの心配もありません。ナパエイラに戻る場所がないのであれば、実家であるサラヴァン子爵家へ。とにかく帰らせてくださいませ」

 エリオットは不思議そうに首をひねる。

「なぜ、そう急ぐ必要がある? 今は養生することだけ考えていればいいのに」
「なぜって! ここはエリオットさまのご正妃だけに許される場所だからです」

 彼はにっこりと笑って、とんでもないひと言を告げる。

「ほら、なんの問題もないじゃないか。ーー君は私の正妃になる女性なんだから」
「は?」
「この部屋で過ごすのも、私に看病されるのも当然のことさ」

 ハンナは目を瞬き、幽霊でも見るかのような目つきでエリオットを凝視する。

 そんなハンナの顎をエリオットはそっと持ちあげ、顔を近づけた。
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