呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「えぇ、そうなのよ。第四王子のエリオット殿下の教育係が決まらず……困っているみたいでね」
「えぇっと、教育係は上級貴族の令嬢たちにすごく人気の職だと聞いた覚えがありますけど」

 貴族令嬢が務める教育係とは、ある意味で世間知らずの王子に社交界での処世術を教えるのが役目だ。ダンスや夜会でのマナー、そしてもっとも重要なのが〝女性の扱い方〟。噛み砕いた言い方をすれば、恋愛指南といったところだろうか。

 教育係の令嬢がそのまま妃になるケースはほぼないが、貴族としては王子と親しくなって損はない。どこの貴族も「ぜひ我が娘を教育係に」と売り込む……という話だったはず。

「それは、ほら、第四王子さまだから」

 やや言いづらそうに母は続ける。

 最後まで聞かずとも、言いたいことは理解できた。

 第四王子、エリオット・カーミレスは、『不遇王子』のあだ名どおり立場も権力も弱かった。実母は王宮の下働きをしていた下級貴族。彼女を遊び相手に選んだのは国王陛下なのに、社交界は彼女をひどく罵倒した。

『身の程知らずの売女』『王宮に紛れ込んだ娼婦』『若さしか取り柄のない無教養女』

 ごく普通の娘だった彼女の心には重い負荷がかかったのだろう。

 エリオットを産み落とすとすぐに、病で亡くなってしまった。

 オスワルト王国には、すでに正妃が産んだ三人の健康な男児がおり、全員が美貌・知性・武勇・魔力のすべてを兼ね備えた完璧な王子であった。
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