呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 部屋を綺麗に掃除し、離宮の護衛をしている衛兵を通じてサイズの合った衣服も用意させた。

 彼の食事にも要望を出したものの、改善の兆しが見えないので、ハンナは自ら食事やおやつを差し入れた。

「今日はサンドイッチとスコーンを持ってきました。スコーンはですね、木苺のジャムをのせて食べるのがオススメです」

 さっくりと焼きあがっているスコーンを半分に割り、片方をエリオットに渡す。彼はハンナのアドバイスどおりにジャムを乗せ、大きく開けた口のなかに放り込む。ひとつ、もうひとつと、スコーンはあっという間に消えていった。

「よかった。お気に召してくださったんですね」

 ハンナはふふっと口元をほころばせる。彼の反応はとても素直で、好みに合ったものだと食べるペースが早い。

 甘いものは大好きで、酸味の強い味は少し苦手のようだ。

 まったく感想はもらえないけれど、この気持ちのよい食べっぷりを見られるだけでも早起きして作ってきた甲斐がある。

(食事の差し入れをはじめて一週間。少し顔色がよくなってきたのではないかしら)

 彼が少し視線をあげる。サファイアの瞳がまっすぐにハンナを見つめた。

(うふふ。肌艶がよくなると、美しい瞳がますます際立ちますね)

「これ、おいしい」

 残りひと口になったスコーンを片手に、エリオットがぽつりとつぶやいた。

(は、初めて! 感想を聞かせてくださった)
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