呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「この男にはまったく共感できない。そもそも、どうして愛する女と別の女を間違ったりするんだ? 愛しているのではなかったのか」

 愛しているのならば、間違うはずがない。

 若い彼らしい、まっすぐな主張だ。ハンナはクスクスと笑って、物語の青年を擁護する。

「そこはほら。この悪役は、優秀な魔女ですから。そっくりそのまま主人公の姿に変身しちゃうんですよ。愛する女性にほほ笑まれたら、キスをせがまれたら、クラッとくるのが男性の性なのでしょう」

 エリオットはちっとも納得できない様子だ。彼の顔をのぞき込みながら、ハンナは問う。

「殿下は、間違わない自信がおありですか?」
「うん。絶対に間違ったりしない」

 きっぱりと、彼は言った。清々しく、力強い声だった。

「そうですか。エリオット殿下の奥方になられる女性は幸せですね」

 今は原石の彼だけれど、きっといつか最高級のサファイアになる。ハンナの勘がそう主張していた。

 だからきっと、彼の妻は王国一幸せな花嫁となるだろう。

「俺は結婚なんかしないよ……俺の妻になりたい女性など、この世にはいないから」

 夜が明けたら朝になる。そのくらいの当然さで彼は言った。

 悲しみや苦しさはにじんでおらず、そういうものと悟っているような表情だった。

「そんなことはありませんよ!」

 ハンナはややムキになって否定する。
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