呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
一、十七年ごしの求婚
一 十七年ごしの求婚
 
 ハンナ・サラヴァンは歴史ある大国オスワルトの中級貴族サラヴァン子爵家の次女として、この世に生を受けた。

 ブルネットの緩い巻き毛はあまり好きではないけれど、赤みの強い瞳はルビーのようだと褒められるのでお気に入り。絶世の美女ではないものの、大国の貴族らしいたおやかな気品はある。歴史に名を残す才女ってほどではないけれど、語学と音楽は得意。

 まぁ、ようするに可もなく不可もない、平凡な貴族女性のひとりだった。

 とある日、父であるサラヴァン子爵が言った。

「お前の結婚が決まったよ」

 顔も知らない相手との政略結婚。だが、それは貴族女性としては当たり前のこと。

 ちょっと変わった点といえば、嫁ぎ先がえらく遠方の異国だった点だ。

 この国の貴族女性のほとんどが、自国内の身分が釣り合う貴族と結婚する。他国との縁談もないわけではないけれど、王族女性と比べれば稀なこと。あった場合も、嫁ぎ先はオスワルトの属国であるディーン公国辺りになるケースが多い。

 そんななかで、ハンナの嫁ぎ先ははるか北に位置する新興国家のナパエイラだというのだ。

「ナパエイラ……聞いたことはありますけど、どうしてまたそんなに遠くへ?」
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