呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 ハンナは先ほどの本があった場所まで歩いていき、別の本を取ってもとの場所に戻ってきた。

 それからエリオットを見てにっこりと笑う。

「ご覧のとおり、私の魔法レベルですと自身の手足を使ったほうが断然に早いんですよ。一度に大量の本を浮かすことも、ハイスピードで運ぶこともできませんから」
「あ……」

 エリオットはようやくハンナの言いたいことを理解してくれたようだ。

「私の魔力が低レベルと言われればそれまでですが、私はそうは考えません。私たちの身体は魔力に頼らずとも結構有能だと思うんです。ふたりで一日がんばったら、きっとこの書庫をピカピカにすることができますよ!」

 くしゃりと、エリオットは弱ったような笑みを浮かべる。

「――ハンナらしいな。おかしな誤解をして悪かった」
「エリオット殿下は私より力持ちですから、とても頼もしいです」

 エリオットの身長はハンナとそう変わらないし、痩せていて二の腕などハンナより細いくらい。
 けれど、先ほど彼の手が意外にも大きいことを知った。彼はこれから、どんどん逞しくなっていくのだろう。

「――うん。重い本は俺が持つから……その……頼ってほしい」

 ものすごく照れくさそうに、彼は言った。

「はい、ありがとうございます」

 ふたりで黙々と作業を続ける。

「あとはあの背の高い本棚を整理するだけですね」
「俺もハンナもきっと一番上には手が届かないな。なにか台になるものを持ってくるよ」
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