呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 仲がいいのか、悪いのか、よくわからないふたりだ。が、今のハンナの思考はそれどころではなかった。

(やっぱり六大精霊……エリオット殿下を使役主だと言ったわよね?)

「あの~」

 ハンナはおそるおそる片手をあげた。

「なんだ、女」

 エリオットより先にハーディーラがこちらを向く。

「あなたは六大精霊のひとり、闇をつかさどるハーディーラさま、で間違いないのですよね?」

 彼は自信満々に腕を組み、鼻先を上に向けた。

「おう。お目にかかれて光栄に思えよ」
「はい、光栄でございます。ちなみに、エリオット殿下とのご関係は?」

 ハーディーラはエリオットを見て、フンと心外そうに吐き捨てる。

「使役主……とは認めたくないな。俺はこんなやつに使われるのはまっぴらだ」
「別に俺も、クロを使役したいと望んではいない。勝手にどこへでも行っていいのに」

 ハーディーラの額に青筋が浮かぶ。

「そうしたくても、お前がいつも呼び戻すんだろうが!」
「そっちが勝手に帰ってくるんだろう」

 精霊使いは使役する精霊を自由に選べるわけではない、と聞いたことがある。

 見えない糸のようなもので繋がっていて、互いに呼び合うらしいのだ。専門的には魔力の共鳴と言われている。

 繋がっている精霊はひとりだったり、複数だったり、糸が切れて途中で関係が終わることもあるそうだ。

 ふたりの話を聞くかぎり、互いに望んではいないが呼び合っているという状態なのだろう。
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