呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「俺たち精霊は、好んで人間に使役されているわけじゃない。圧倒的な魔力に屈服させられているに過ぎないんだ。つまり、エリオットには俺さまを完全屈服させるほどの力はないってことだ」

 ふたりの話でなんとなく理解はできた。とんでもない才能があるけれど、まだ開花していない。そういうことなのだろう。

 そこで、ハンナははたと思いつく。

「でも、さきほどの花瓶は? あれはエリオット殿下の魔法では?」

 エリオットはハーディーラを見て、眉根を寄せる。

「あれは本当にクロが勝手にしたことじゃないのか?」
「俺が人間のために力を使ったことなど、これまであったか? さっきのはお前に〝使役させられた〟んだ」

 ハンナは目を丸くする。

「ようするに……さっきのあれはエリオット殿下が精霊使いとして魔法を使った。そういうことになりますよね?」

 エリオットは答えないが、ハーディーラは「ま、そういうことになる」と返事をくれた。

「もっとも、最初で最後だがな。俺は人間に使われるのなんかまっぴらだ!」

 ハンナは小さく身震いをした。

(私は、とんでもない瞬間に立ち会わせていただいたのかもしれない……)

 エリオットの六大精霊使いとしての力は、今まさに花開こうとしているのだろう。彼はとびきりの原石だったのだ。

「エリオット殿下」

 ゴクリと唾をのみ込んだあとで、ハンナは問いかけた。
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