呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「さきほど、私を助けてくれたとき、なにか特別なことをされましたか? それが殿下の魔力を引き出す引き金なのかもしれないですよ」
「いや、とくになにも。ただ、ハンナが危険だからどうにかしたいと思っただけだ」
「私が危険だったから……。なるほど、殿下は自分より誰かのために強い力を発揮するのかもしれないですね」

 まだ短い付き合いではあるけれど、エリオットが心優しい人間であることは十分に伝わっている。この仮説はいかにも彼らしい。

「なら、女。お前がどこか高い場所から飛び降りるとか、運河でおぼれてみるとか、ためしてみたらいいんじゃないか?」

 ハーディーラの提案にハンナは力強くうなずいた。

「妙案ですね、ハーディーラさま! さすがは六大精霊です」

 早速、この離宮の一番高い場所にある遠見台に向かおうとハンナは立ちあがる。勢い込んで動き出したハンナの腕をエリオットが強く引いた。

「クロの口車にのせられるな、ハンナ。俺の魔力なんかのために、君の身を危険にさらしてどうするんだ?」
「のせられていませんよ。ハーディーラさまを使役できるかどうかは、殿下の人生にとって非常に大切なこと。さらには、この王国の未来にも関わる話です。それに比べれば、私の危険などささいなこと」
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