呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「まったく。この俺さまがどうして、こんなアホに使役されるはめになっているのか……」

 ハーディーラはおおげさにため息をついた。

 エリオットとハーディーラ。ハンナはふたりの顔を順に見て、ポンと胸の前で両手を合わせた。

「やっぱり! エリオットさまは立派な六大精霊使いになられたんですね」

 不遇王子だった彼が国王の座についたと聞いたときから、そうに違いないと思ってはいたが……エリオットが彼に手を焼いていたことはよく知っているので感慨深い。

「あぁ。ハンナがナパエイラに旅立ってから、クロはずいぶんとしおらしくなった」
「俺はなにも変わっていない。お前の魔力が数万倍に膨れあがって逆らえなく……いやいや、そんなはずは」

 ハーディーラは不本意そうに、頭をクシャクシャとかきむしった。

(なんにせよ)

 ハンナは穏やかにほほ笑む。

「以前にも増して、仲がよさそうで安心しましたわ」
「ぐわぁ~。気持ちの悪いことを言うな、女。俺さまは解放されたいんだ! 自由でいたい!」

 ハーディーラはあいかわらずだ。なんだか懐かしくて、ハンナはクスクスと笑い続けた。

「で、今日はなんの用だよ?」
「ハンナと王都を観光しようと思ってな。馬車でもいいんだが、目を覚ましたばかりのハンナの体調に障っては困るから」

 魔法で移動しようということなのだろう。「ちっ」と舌打ちしながらも、ハーディーラはスイと片手をあげる。
< 51 / 136 >

この作品をシェア

pagetop