呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「そう。今はナパエイラの品も、たくさんオスワルトに入ってくるぞ」
「……すごい」

 ハンナがオスワルトにいた頃、ナパエイラはまだまだ謎に満ちた国というイメ―ジだった。向こうにとってのオスワルトも、もちろん同じ。だから、ハンナは誤って伝わっている故国の情報をつど訂正するのに忙しかった。

「ナパエイラだけじゃない。君の知らない十七年の間で交易はとても発展した」
「本当ですね。現在のエルガは、とても国際色豊か」

 かつては見かけなかった風貌の人々がたくさん歩いている。

 オスワルトは大陸のなかでは保守的なお国柄で、どちらかといえば閉じた国だったはずなのに……。

「私は亡き父とは違って、オスワルトを開けた国にしたいと考えている。人と物の交流を活発にし、諸外国から多くを学びたいと思う」

 君主としての理念を語る、エリオットの横顔は凛々しく惚れ惚れしてしまう。

「もちろん異国人が増えることでのトラブルや、自国の産業が衰退してしまうというマイナス面もあるが、それでもオスワルトの未来のためには――」

 彼の話を聞き終えたハンナは、しみじみとつぶやく。

「とても、立派な王になられたのですね」

 今のエリオットはハンナにはまぶしすぎるほどだ。

「まぁな。と、かっこよく言い切りたいところだが」

 そこで、彼はクスリと笑って肩をすくめる。

「この外交方針を考えはじめたきっかけは、ごく私的な理由からだ」
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