呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
(どうして、こんなにも胸が高鳴るのかしら……)

 興味のおもむくままに店を見て回ったり、甘いものを買い食いしたり。

「わぁ、これは変わっていない。大好きだった味だわ」
「では、買って帰ろうか」

「さ、最近はこのような丈のドレスが流行っているのですか? 足首が見えるのが下品だと言われていたのに……時代は変わったのですね」
「君の足首はとても綺麗だから、きっと似合う。でも、外で着るのはダメだな。私の前でだけにしてほしい」

 ふたりで過ごす時間は想像以上に楽しく、あの離宮でともに過ごした日々を思い出す。

(外見はすっかり大人になってしまったけれど、やっぱり〝エリオット殿下〟ですね)

 彼の中身は昔のままだ。素直で一途で、まっすぐ。

 以前よりずっと男らしくなった彼の横顔に見入ってしまい、ハンナは周囲に注意を払っていなかった。ふと気がつくと目の前に馬車が迫っていて――。

「ハンナッ」

 グイッと、力強く彼に背中を抱き寄せられる。次の瞬間、ハンナがいた場所を馬車が通りすぎていく。間一髪だったようだ。

「大丈夫か?」
「は、はい。エリオットさまがかばってくれたおかげで」

 逞しい胸にうずめられたハンナの顔がみるみるうちに赤くなっていく。

 彼の体温、筋肉の感触、大人の男性の匂い。すべてが、ハンナの女としての本能を刺激する。

 身体がチリチリと焦げつくようだ。

(昔はひどく痩せていらしたのに……)
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