呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 変わっていない、別人みたい。

 ハンナの思考はその二点を行ったり来たりして、忙しい。

「あの、エリオットさま?」
「ん?」

 ハンナをきつく抱きしめたまま、彼はいたずらっぽく目を細める。
 
「そろそろ、放していただかないと……人目が……」

 公衆の面前で抱き合っているふたりに、チラチラと視線が注がれていた。まさか男のほうが、この国の王だとは誰も思いもしていない。

 エリオットはハンナの耳に唇を寄せ、そっとささやく。

「気づかなかった? これはわざとだよ」
「え?」

「こんなにもかわいいハンナとデートをしているんだと、王都中の人間に自慢したくなってね」
「じ、自慢になんて……。エリオットさまはとても立派になられましたが、ハーディーラさまのおっしゃるとおり女性の趣味だけは、少し変です」

 自分で言うのもなんだが、ハンナはわりと賢い女だ。

 過度な自惚れも自虐もせず、客観的に自分を見つめることができると思っている。

 (可もなく不可もなく。六十点の女だと自信を持って言えますのに)

 彼は自分を百二十点の女として扱う。すごく、変だ。ハンナの困惑をエリオットは笑い飛ばす。

「変じゃないし、別に変でもいい。ハンナをかわいいと感じられない目と、感性なら、私には不要だから」
「も、もうっ」

 彼は優しくハンナの身体を解放し、それからさらりと頬を撫でる。

「急に動き回って、疲れていないか?」
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