呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「いえ、全然。とても……楽しいです」

 その言葉にエリオットは嬉しそうにほほ笑む。

「よかった。――っ」

 ふいに、エリオットがケホケホと咳込み出した。

「大丈夫ですか?」

 ハンナは慌てて彼の背を撫でる。息苦しいのだろうか。胸元のシャツをグッと握り、喘ぐように顎を上に向けている。

(王の公務は忙しいもの。きっと疲れているんだわ。もともと、身体のお強い方ではなかったし)

 離宮で暮らしていた頃の彼は病弱だった。

 生活環境が整ってなかったせいで今は大丈夫なのかと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。

「エリオットさま。帰って、お休みになられたほうがよろしいのでは?」
「あぁ、ごめん。もう大丈夫だ」

 エリオットはハンナを見て、にこりとする。

「君も知っているだろう。私は少し喉が弱くて。でも、たいした問題じゃないことは侍医に確認済みだから。心配しないで」

 医師の診断を受けているのであれば安心だが、無理はよくないだろう。

 ハンナはもう帰ることを提案したが、エリオットは「もう少しだけ」と懇願する。

「本当にお身体は大丈夫なんですね?」
「もちろん。あの頃に比べたら、むしろ強くなっただろう?」
「それはそのとおりですが」

 彼の言うとおり、以前と比べればとても健康的になったように思う。結局、ハンナはエリオットの要求を受け入れた。
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