呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 彼はハーディーラを呼び、もう一度空間移動の魔法を使った。訪れた場所は――。

「ここはっ」

 眼前に広がる光景にハンナは目をパチパチと瞬く。

「あの離宮、ですね?」

 古い建築様式の、赤茶色の建物。

 けれど当時とは異なり、今はきちんと人の手で管理されているのがわかる。入口扉の上にいつもあった蜘蛛の巣はなくなっているし、自然いっぱい荒れ放題だった中庭も美しく整えられている。

 懐かしい景色にハンナは目を細めた。

(あぁ、思い出すわ)

 ここには、エリオットとの思い出がたくさん、たくさん詰まっている。

 楽しい時間、幸福な記憶、そして……胸が張り裂けるほど悲しかった別れのとき。
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