呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
四 できない約束
四 できない約束


 エリオットの教育係に就任してから、半年以上の月日が流れた。

「おはよう、ハンナ」

 彼の笑顔は、春の日差しのように柔らかで温かい。

「おはようございます、殿下」

 初めて会ったときと比べて、エリオットの背はぐんと伸びた。腕や胸にも男らしい筋肉がつき、見違えるほど逞しくなっている。

 銀色の髪は月の光を閉じ込めたように艶やかで、サファイアの瞳は輝きを増す一方。

 その精悍さに、ハンナはついつい見惚れてしまう。

(もう、原石とは呼べないですね)

「ハンナにすすめられたこの本、読み終えたよ。我々の大陸とはまったく異なる文化の発展の仕方で、すごく興味深かった。いつか訪れてみたいな」

 ハンナが貸したのは、はるか東方にある大陸の史書だ。距離が離れすぎていて、オスワルトと直接の国交はないものの近隣諸国との交易を通じて東大陸の品物も流通はしている。
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