呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 じっとハンナを見つめてエリオットはつぶやく。その眼差しは熱っぽく、見つめられるハンナは肌がチリチリと焦げつくような心地がした。パッと顔を背けながら言う。

「将来、殿下が触れることになる女性は、私などよりずっと高貴なお方ですから。大切に大切に、扱ってくださいませね」
「ハンナ以外の女性に触れる予定はないから、その指南は必要ないと思うが……」
「で、殿下!」

 ニコニコと邪気ない笑顔を向けられると、どう怒っていいのかわからない。

 彼の世界はまだまだ閉じていて、ハーディーラとハンナ。それだけだから、刷り込みはますます根深くなってしまっている。

「お相手の、素敵だなと思ったところを褒めるのもよいことです。肌が綺麗とか、今日のドレスはよく似合うなど」

 古い指南書なので、口説き文句がやや古風すぎる。が、褒められて嫌な気持ちになる女性はいないだろう。

「――ハンナの白い肌は、最高級のシルクすらかすむほどに美しい。そして、今日の深緑色のドレスは君の綺麗な肌をよく引き立てているね」
「……キザすぎず、自然で、百点満点の褒め言葉ですが、贈る相手を間違えています。そういう台詞は、未来の奥方さまのために心に秘めておいてください」
「俺はハンナ以外の女性を褒める気はない。君に『ノー』と言われてしまったら、この勉強の成果を見せる日は永遠に来ないな」
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