呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 かぁと頬を染めるハンナに、エリオットは誠実な表情を向ける。

「触れたいと思うのは、ハンナだけだ。だから君が『イエス』と言ってくれるように、がんばるよ。無理強いはしたくないからね」

 王子殿下という身分でありながら、無理強いはしない。相手に望んでもらえる男になるべく努力をする。

(その台詞を向ける相手が私でなければ……百二十点を差しあげたいパーフェクトな心構えなのですが)

 エリオットは甘やかに笑む。

「愛は伝えることを惜しんではいけないのだろう? ならば何度でも言うよ」
「エリオット殿下……」

「ハンナに名前を呼んでもらえるの、すごく嬉しい」

 キラキラと輝く瞳、その真ん中に、彼はハンナをつかまえる。

「俺はハンナが大好きだ。君の存在が、この世界で一番大切なんだ」

 自分はもう、教育係を辞退すべきなのかもしれない。たとえ魔法が使えなくても極上の宝石に変化しつつある今の彼ならば、ハンナの代わりに手をあげる貴族令嬢はいくらでも出てくるだろう。

 この世には自分より魅力的な女性がごまんといる。

 エリオットにそれを知るべき時期を迎えたのだ。わかっているのに――。

 ハンナは目を伏せ、まごまごと自分の指先をもてあそぶ。

 (どうしてかしら。言葉が出てこないわ)

 彼と過ごす、この愛おしい時間をほかの誰にも奪われたくない。ハンナはたしかにそう感じていた。

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