呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 ハンナは姫役としては、ちょっと美貌や可憐さが不足しているし、やや年も重ねすぎているかもしれない。

 けれどエリオットは、きっと素晴らしく美しい英雄になっていることだろう。

「素敵ですね。でも……」

 まっすぐなエリオットに、嘘はつきたくない。

「その約束はできません。殿下の未来はまだまっさらですが、私のたったひとりの相手はもう決まってしまいましたから」

 今のハンナはもう婚約者がいる身だ。夢物語のような浮かれた約束をしていいはずがない。

 エリオットもわかってはいるのだろう。苦しそうに目を伏せた。長い睫毛が寂しげにふるえている。

(悲しい顔で別れるのは嫌ですわ……最後は笑って)

 ハンナは必死に、明るい笑顔を作ってみせた。

「代わりに別の約束をしませんか?」
「別の約束?」

「はい。私はナパエイラで、ハーディーラさまの素晴らしさを広めます」
「クロの?」

「えぇ。闇の精霊ハーディーラの威光が異国にまでとどろけば、いつか殿下が立派な六大精霊使いとなったとき、その地位をより高く見せることができるでしょうから」

 噂のは侮れないものだ。ごく普通の少女が恐ろしい魔女に仕立てあげられたり、なんでもない古びた剣が伝説の宝刀になったりする。

「う~ん、クロを手懐けられる気はまったくしないが……」
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