呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
鈍感な彼とは違い、リリアナはハンナの存在に気がついている。
ニヤッとあざけるような笑みを浮かべ、ハンナが聞いているのを承知のうえでゆうべの情事について口にしたのだろう。
「でもぉ、私に注ぐ愛のいくらかくらいは、奥さまにも差しあげたら? 結婚して二年も経つのに、いまだ乙女だなんて……私なら恥ずかしくて死にたくなっちゃう」
「ふん。古くさい国から嫁いできたお上品ぶった女などつまらぬ。なにか理由さえ見つかれば追い出したいくらいだが……」
「おかわいそうに。あら? でも、奥さまを追い出したら私が伯爵夫人になれるのかしら。あっ、ジョアンさま~」
ジョアンは彼女の口を塞ぐように口づけた。きっと、答えをごまかすためだろう。
貴族の結婚は本人だけの意志でどうこうできるものではない。
もしハンナになにかあっても、リリアナが正妻になるのは少し難しいと思われる。
前夫を魔術で殺したとか、もとは下町の娼婦だとか、オスワルトに比べればずいぶん自由なこのナパエイラの社交界でも、彼女の評判はあまりよろしくない。
『最高級の愛人』
本人は知らない様子だが、それが社交界でのリリアナのあだ名だった。つまり、愛人以上にはなれないということだ。
リリアナの豪奢なハイヒールが赤い敷物をギュッと踏みつぶすのを一瞥してから、ハンナはそっと彼らに背を向けた。
ニヤッとあざけるような笑みを浮かべ、ハンナが聞いているのを承知のうえでゆうべの情事について口にしたのだろう。
「でもぉ、私に注ぐ愛のいくらかくらいは、奥さまにも差しあげたら? 結婚して二年も経つのに、いまだ乙女だなんて……私なら恥ずかしくて死にたくなっちゃう」
「ふん。古くさい国から嫁いできたお上品ぶった女などつまらぬ。なにか理由さえ見つかれば追い出したいくらいだが……」
「おかわいそうに。あら? でも、奥さまを追い出したら私が伯爵夫人になれるのかしら。あっ、ジョアンさま~」
ジョアンは彼女の口を塞ぐように口づけた。きっと、答えをごまかすためだろう。
貴族の結婚は本人だけの意志でどうこうできるものではない。
もしハンナになにかあっても、リリアナが正妻になるのは少し難しいと思われる。
前夫を魔術で殺したとか、もとは下町の娼婦だとか、オスワルトに比べればずいぶん自由なこのナパエイラの社交界でも、彼女の評判はあまりよろしくない。
『最高級の愛人』
本人は知らない様子だが、それが社交界でのリリアナのあだ名だった。つまり、愛人以上にはなれないということだ。
リリアナの豪奢なハイヒールが赤い敷物をギュッと踏みつぶすのを一瞥してから、ハンナはそっと彼らに背を向けた。