呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「……エリオット殿下?」

 呆然とつぶやくハンナの脳裏に、彼の姿が蘇る。

 出会ったときのエリオットは十五歳、『不遇王子』と呼ばれていた。

 銀髪は艶がなくボサボサで、お世辞にも美しいとは言えなかった。痩せた身体に白い肌がどうにも不健康で……。

 ほかに引き受けてくれる令嬢がいない、そんな理由から自分は彼の教育係を務めていたのだ。

(でも、嘘よ。この方がエリオット殿下のはずがない)

 だって彼はハンナより五つも年下だったのだ。目の前にいる、エリオットを名乗る男性はどう見てもハンナより年上。三十歳前後と見受けられる。

「まぁ、君が驚くのも無理はない。なにせ、十七年ぶりの再会だからね」
「じゅ、十七年? あぁ、ダメだわ。頭が混乱して……私は死んだはずでは?」
「落ち着いて、きちんと説明をしよう」

 目まいを覚えて、ぐらりと傾いたハンナの上半身を彼がしっかりと支えてくれる。

 それから、彼が話し出す。

 まず、ここは嫁ぎ先のナパエイラではなく、やはり故国オスワルトのようだ。

「……そうですよね。この温かさはナパエイラではありえない」

 温暖なオスワルトと違い、ナパエイラは極寒の国だ。空気も、景色も、すべてが異なる。

「嫁ぎ先のシュミット伯爵家でのことを、覚えているかい?」
「えぇ。覚えておりますわ」
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