呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「あんな、ささいな約束を覚えていてくださったのですか?」

 かつて自分が彼に話した言葉を思い出す。

『ナパエイラは寒い国で、あまり花が咲かないらしいのです。オスワルトのように、向こうでも美しい花々を愛でることができたら嬉しいなぁと思うのですが』

 エリオットは甘やかに目を細める。

「私がハンナとの約束を守らぬはずがないだろう」

 この虹色の花はハンナのために生まれたもの、らしい。

「それに、ハンナも約束を守ってくれていたじゃないか」
「え?」

「ナパエイラを訪ねたとき、クロが伝説の英雄みたいに語られていて驚いたぞ」
「まぁ、悪い気は……しなかったな」

 クスクスとエリオットは笑う。ハーディーラはまんざらでもなさそうな顔だ。

 たしかに、ハンナも彼に約束したとおり〝闇の精霊、ハーディーラがどれだけ立派か〟をかなり誇張して吹聴していた。

 その甲斐あって、ナパエイラの社交界にハーディーラの名前は結構広まったはずだ。

「でも、ナパエイラを訪れたとは? どういうことですか?」

 エリオットがあの国を訪ねてきていたなんて、ハンナはまったく知らなかった。

「君が嫁いでしまって二年。ようやくこの花を生み出すことができたから、魔法を使ってこっそりナパエイラを訪ねたんだ。ハンナにこの花を届けて『次期王になると決まった』と伝えたくてね」
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