呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「十五年前に渡そうとしていたものだ。受け取ってくれるか、ハンナ」

 太陽の光を受けて、虹色に輝く花。

 あまりに美しさに、胸が詰まっていっぱいになる。

「――ありがとうございます。こんなに綺麗なものは初めて目にしました」

 目頭が熱い。温かく、幸福な涙がハンナの頬をハラハラと伝う。

 エリオットは親指でそれを拭いながら、クスリとする。

「だろう? 私とクロの努力の結晶だからな」

 エリオットは虹色の花の美しさに自信満々のようだが、ハンナを泣かせたのは花の美しさではない。

「この花はもちろんですが、エリオットさまの思いが……あまりにも美しいので」

 この世には、こんなにも純粋で尊い愛があるのか。

 そして、それが自分に向けられているという事実にハンナは感動していた。

 彼はゆっくりと首を振って、中庭を眺める。

「ここで君と過ごした時間を、思い出さない日はなかった。あの頃の私は……君に甘え、助けられ、守ってもらうばかりだったな」

 そんなことはない。そう伝えたいのに、うまく言葉にできない。

 たしかに初めは、恐れ多くも『素直でかわいらしく、弟のようだ』と思っていた。

 でも、そんなのは最初だけで……彼は優しく、強く、大きな愛をハンナに与えてくれた。

(私はいつしか、いつしか、あなたを……)
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