呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 ナパエイラに嫁げと言われて、最初に浮かんだのはエリオットの顔だった。

 離れたくない、二度と会えないなんて耐えられない、そう思ったのだ。

 ジョアンが自分を抱かないこと。むなしさと同じくらい、ホッとする気持ちもあった。それは、ハンナ自身が彼に触れられることを望んでいなかったからだ。

(心を揺さぶられるのは、胸が熱くなるのは……)

 エリオットはいつものように、まっすぐにハンナだけを見つめる。

「しつこくて、すまない。でも君のいない十七年間、ずっと伝えたくて仕方のなかった言葉だから。何度でも言いたいんだ」

 サファイアの瞳にハンナだけが映っている。

「私に名前を与えてくれたのも、未来を信じさせてくれたのも、愛を教えてくれたのもハンナだった。――心から、君を愛している」

 ハンナの胸が喜びにうち震える。

(あぁ、もう認めるしかありませんね。私はずっと、この人を思っていた。エリオットさまに、恋をしていた)

 ハンナは泣き笑いみたいな顔で答える。

「エリオットさま。私はあなたが思うほどには、立派な人間ではありません。だって、シュミット伯爵の妻であったときに大罪をおかしているのです」
「大罪? どんな罪だ?」

 ハンナは彼の耳元に顔を寄せる。

「人妻の身でありながら……ひとりきりのベッドのなかで、あなたを思い出しました。あのとき、キスを受け入れておけばよかった、と」
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