呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 きっと男性が脱がせやすい構造になっているのだろう。この夜着のボタンは背中側についていて、着る本人からしたら非常に厄介だった。緊張で指先がこわばっているせいか、上手にボタンを留められない。

(そうだ、魔法で!)

 ナパエイラでは遠慮して使いづらかったハンナの生活魔法。この国では好きなだけ使って大丈夫なはずだ。

 久しぶりなので練習のつもりで、ハンナは魔法でボタンを留めることにチャレンジする。

(あら、あらら)

 眠っている十五年の間に鈍ってしまったのだろうか。久しぶりの魔法は暴走気味で、ボタンを留めるどころか逆に夜着が肩からはだけていった。

「むぅ。どうして??」
「手伝おうか?」

 ひとりでワタワタしていたハンナの背中に、含み笑いの声がかかった。

「エリオットさま! まだ公務が残っていたのでは?」

 こんなに早くやってくるとは聞いていなかった。エリオットはクスクスと笑いながら、ハンナに近づいてくる。

「今夜は……十七年間、待ちわびたハンナとの初めての夜だ。公務なんて一瞬で終わらせるに決まっているだろう」
「――あっ」

 エリオットの手がハンナの背に触れる。

 彼はボタンを留めるのを手伝ってくれようとしただけなのに……媚びたような、甘い声が漏れてしまった。

「すぐに脱がすことになるのだから留める必要はない気もするが……このドレスを着たハンナをじっくり見たいしな」
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