呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 そんなふうに言いながら彼はボタンを上まで留め、それからくるりとハンナの身体を反転させて自分のほうを向かせた。

「あぁ、天から女神が降臨した」

 恍惚とした表情でハンナを見つめ、赤いリボンを結んでくれる。

「よく似合う、かわいい」
「エリオットさまが私のためにご用意してくださったと聞きました。ありがとうございます」

 エリオットは苦笑して白い歯を見せた。

「う~ん。半分以上、自分のためかもしれないな。どのドレスを着た君を抱くのが一番幸福な気分になれるか、死ぬほど悩んだよ」

 彼はハンナのおろした髪をひと房つかみ、そっと唇を寄せた。

「まぁ、どんなドレスを着ていても、あるいはなにも着ていなくても、ハンナというだけで十分だという結論に至ったけどね」

 彼はコトを急いだりはしない。

 横抱きにハンナを抱いて、ゆっくりとベッドまで運んでくれる。

 そして「まずはお茶でも飲みながら、お喋りを楽しもう」と指先をスイッと動かした。

 彼の魔法により、ベッド横の丸テーブルのうえにハーブティーが用意された。

 ハンナは礼を言って、ティーカップを口に運ぶ。鼻をくすぐる柔らかな香りに、少し心がほぐれた。

「この魔法はハーディーラさまがそばにいなくても使えるんですね」
「あぁ。さすがに今夜はクロを呼ぶことはない」

 エリオットはハンナの髪を撫で、ささやく。
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