呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「ハンナの綺麗な髪、白い肌、愛らしい声、今夜の君は、私だけのものだから」

 エリオットの声は一段低くなり、ふたりを包む空気がとろりと濃密なものに変わった。

 ハンナは、ドクドクとありえない速度で打ちつける自身の鼓動だけを聞いていた。

「エリオットさま」
「結婚してくれてありがとう、ハンナ。私はとても幸せだ」

(この素敵な男性が私の夫……)

 やっぱり、今でも信じられない思いだ。甘く細められるサファイアを見つめて、ハンナはつぶやく。

「本当に……結婚したんですよね。私がこの国の王妃だなんて、エリオットさまが望んでも王宮が絶対に認めないかと思っていました」

 王宮すなわち、上級貴族や役人たちのことだ。頭の固い彼らが、ハンナを受け入れ祝福してくれたことは正直意外だった。

「あぁ、それは単純な理由だ! 私はハンナ以外の女性には触れらない体質だから。私の子を産んでくれる可能性のある女性は君しかいない。跡継ぎを期待する王宮が君を歓迎するのは当然のこと」

 ハンナ以外には触れられない体質……それはつまり……。

「では、エリオットさまも初めてなのですか?」

 エリオットは照れるそぶりもなくうなずいた。

「当然だろう? 君が私に教えたんじゃないか。口づけも、肌を重ねる行為も、たったひとりの愛する相手とだけ、だって」 

 甘い声で彼は続ける。
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