呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
「たとえ君が別の男の妻になっても、ずっと眠り続けていても、私が触れたいと思うのはハンナだけ。そもそも、私のこの瞳はハンナ以外を女性とは認識できない構造になっているようだし」
「そうだったんですね。でも、エリオットさまは私の知らないうちにキスがすごく巧みになって、女性のエスコートもなんだか手慣れていて……」

 てっきり経験済み、なんなら経験豊富なのかと思っていた。

(白い結婚とはいえ、私は人妻だった身。エリオットさまの過去を詮索する権利などないと、必死に考えないようにしていたけれど……)

「本当はすごくすごく、嫌だったんです」

 言葉にすると、自分のモヤモヤがすとんと腑に落ちてくる。

 そう、ハンナはものすごく嫌だったのだ。エリオットがほかの女性をその胸に抱き締め、愛をささやいたことがあるのかも……そんなふうに考えるだけで、身が焼き切られるような心地がした。

 だから思考をシャットダウンして、いっさい考えないようにしたのだ。

「知りませんでした。私って、すごく嫉妬深い女みたいです。エリオットさまの過去も未来も、独占したいと思うなんて」

 恋を知った自分の変化に自分でも驚く。エリオットはハンナの額に優しいキスを贈って言う。

「心配しないで。この身も心も、すべてハンナのものだから。過去も、未来も、来世も、すべて君に捧げる。誓うよ」
「――はい」
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