呪い殺された地味令嬢が最愛妃になるまで~お仕えしていた不遇王子が知らぬ間にヤンデレ皇帝となって、私を花嫁にご所望です⁉~
 唇が触れ合う。甘酸っぱい果物のような味わいが広がり、もっともっと欲しくなってしまう。

「んっ、エリオットさま」

 唇を割って、彼の舌が差し入れられる。意思のある生きものみたいになったふたりの舌が、互いを求めて絡み合う。色っぽい水音を立てて、キスはどんどん深くなっていった。

「エリオットさまのキス……頭がふわふわして、なにも考えられなくなってしまいそう」
「気持ちいい?」

 恥ずかしいけれど、ハンナは素直にうなずいた。あふれんばかりの愛で満たされた心と身体は、とても心地がよい。

「この先も、そんなに下手くそではないと思うよ」

 初めてだと言ったわりに彼は自信満々だ。

「どうして断言できるのですか?」

 コツンとハンナに額をぶつけて、彼はいたずらっぽくほほ笑む。

「想像のなかでは、何度も君を抱いたから。どうやって君に触れ、どんなふうに愛し尽くすか、シミュレーションはばっちりだよ」

 普通ならば、隠しておきたいような黒歴史を彼は堂々と語る。ハンナは思わずぷっと噴き出してしまった。

「私のことになると、エリオットさまはやっぱり少し変です」
「そうかな? そういえば、ついさっきもナーヤに忠告されたな」
「ナーヤに? なにをですか?」

 エリオットは彼女の台詞をそのまま口にした。
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