甘さなんかいらない
.0 再会は甘い毒









知らない匂いが、鼻を掠めた。知らない天井に、知らない黒色のシーツ、枕の横のクマのぬいぐるみちゃんがいない。

ここはどこ。今何時。あたしはどうして知らない場所にいるの。



まぶたを開けたばかりでぼやけて暗かった視界に徐々に光が取り入れられていく。

どうにか身体を起こして、現在置かれている状況を整理しようとするけど、その瞬間、ズキンと音が鳴ってもおかしくないような痛みが頭の中に突き刺さった。



かつ、身体は重すぎて起こせない。だるさと重さが共存して、あたしの意思だけじゃ身体はいうことを聞いてくれない。

とにかくここからわかったのは、あたしが今、これまで置かれたことのない状況に置かれていることだ。



知らない場所で目を覚ますことは今までなかったし、こんなにも身体が重く、頭痛で動けないなんてことなかったのだ。




──「目、覚めた?」




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