甘さなんかいらない【SS更新中】
ゼミ室で、あたし以外の人間もいる空間でそんなに色気を出さないで。もっと触れたくなってしまうの。
あったかくて、あたしを世界のどんな敵からも守ってくれそうな優しさと温もりに甘えたくなってしまう。
ペンが離れた瑛くんの手が、あたしの左手を取った。
ゆっくりと机の下に隠すように移動されて、また無許可に指が絡む。
心臓の音が、指先から伝わらないことを祈る。いつも冷たい瑛くんの手があったかい気がして、熱が伝染してきそうだ。
……この温もりを遥乃さんは知っているの?
もう少しだけ内緒で手を繋いでいたかったけど、瑛くんがまたあたしに何かを伝えるためにペンをとるから離れてしまった。
名残惜しさとともに、あたしの左手だけが机の下にふらふらと行き場をなくしている。