甘さなんかいらない【SS更新中】
「田邊があんなにも愛おしそうに誰かを見るの、初めて見た。あんなに焦って電話をかけてるのも初めて見た。あんなふうに宝物に触れるように笑いかけるの、初めて見た」
「……そんなこと、ない」
「ある。あるの。今、大切にしている子なんだって一目でわかった。誰が見てもわかると思う。だからね、私が言えたことじゃないのだけれど、」
ゆっくりと目を閉じて、呼吸を整えたのがわかった。静かに目を開けて、もう一度あたしに合わせた。