甘さなんかいらない


昨日、駅で別れてから佐原先輩から連絡はなかった。

それが普通なのかも普通じゃないのかもわからないくらい、経験がないのだ。



そして連絡のないまま、翌日、すなわち今日。

たまたま近くを通った小さな演習室の中から、男の人と女の人の声が聞こえてきて、そのいくつかの声があたしの名前を口にしたから、足が勝手に止まって聞き耳を立てずにはいられなくなった。


その中の一つには、昨日一緒に夕ご飯を食べた、その人の声も混ざっていた。




「どうだったん、羽山ちゃん」


「どうもこうも。羽山柚果、クソつまんなかったわ」


「ふは、相変わらず最低だな、直哉」


「いやだってさ、ヤらせてくれるどころかキスすらさせてくんねえんだよ?あんなにあざとく関わってきたのに、あれ処女じゃん?無し無し」


「マジかよー、それはつまんねえな、無し」


「今日は私が満たしてあげるねぇ」


「言い方キモ。んじゃ今日20時に俺んち」





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