甘さなんかいらない【SS更新中】




にっこり口角を上げて、得意げに両手で拳を握りしめたら、「可愛い、襲うね」と意味のない事前予告の直後に唇が重なってそのままソファに身体が沈んだ。


視界いっぱいに、わるく笑う端正な顔。この綺麗な顔に、どんな時も流されて絆されてしまう。意思がゆらゆら揺らめいて飛んでいってしまう。




「一人称の“ゆず”、俺好きなんだよね。可愛い」


「じゃあえいくん限定で復活させるね、たまには」


「うん。そーして。で、制服デートなんだけど、制服は……いや、やっぱなんでもない」


「え、何、気になる」


「んー……気にならなく、させるね」


「……っ!」




耳元でやわく囁かれてから、すぐに首筋に埋めて、瑛くんの手が意思を持ったように自由に動いていく。瑛くんの言う通り、こうなったらさっき言いかけたことなんて気にならなくなる。気にできるだけの余裕をくれない。



瑛くんと、余裕の代わりにくれる甘さで思考が持ってかれてしまうから。



制服を着てやりたいこと、箇条書きでルーズリーフにまとめてたのに。発表できない。うう、瑛くんのばか。



甘くて疼いて溶けて、どうにもなんない。










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