甘さなんかいらない
頑なに顔を向けないでいれば、その二つを書き残して堂々顔を突っ伏し始めた瑛くん。
前から4番目、実質最前でよく寝れるね、すごいわ。また後で、って多分あたしはガイダンスにこの男と行かなければならないのであろう。無念。
まあ、前後同じ授業で、席もなぜか隣になってしまったし、一緒に行かないのも不自然かもしれない。めっっっちゃ嫌だけども!
そしてもうひとつ。“変わったね”。相変わらず男慣れなんかしていないけど、あたしは自分でも変わったと思う。
というか、これがあたしの本物で、今までが偽物だった。思えばこんなふうに自分を怖がらず見せたこと、なかったな。普通に、あざとカワイイを捨てた状態で話していた。それも昔の知り合いに。
まあこれも、人と表面上関わることは苦手ではなかったあたしの一種のコミュニケーション能力なのかもしれないな。あんなに武装してたくせに、案外武器や防具を捨てても話せるんだな、と新しい発見をした。
……それからの時間、やっぱりどうしたって白紙のルーズリーフが埋まることはなく、机に突っ伏す選択肢をした正しかったのではないか、とまで思った。
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