甘さなんかいらない



だからこれがやらかしてしまった後のなのかそうではないのかすらわからない。

けれど、下着しかつけていない状況、一人暮らしっぽい男の部屋、身体の重さと頭の痛さ、記憶を飛ばしている事実。


客観的に、黒に近い真っ黒。そしてそれに加え、この空間で声を発することのできる人物、あたしと、その男。


この男がここにいて、なにもなかったなんて信じられない。しかも裸。はい終わり。主観的に、黒を超えた黒。



「ねえ、聞いてる? ──ゆず、」




“ゆず”とそう呼ぶのも、昔から変わっていないところだ。ソファに座っていた彼が立ち上がり、あたしが横たわるベッドまで近づいてきて、すぐ近くで彼をとらえた。





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