黒王子くんはマスクの下を暴きたい!
二話:お礼は……
翌日。
教室で愛美ちゃんとお喋りしていると、晶くんが教室に入ってきた。
「晶くんおはよ〜」
「おは」
愛美ちゃんはいつものように声をかける。
チラリと晶くんを見ると、バチっと目が合った。
「おはよ、森下さん」
「お、おはよっ……!」
声をかけられると思わなくて、思わず声が裏返ってしまった。
その様子を見て、ニヤリと微笑む晶くん。でもすぐにいつものクールな顔に戻って、自分の席へ向かっていった。
「果穂、晶くんと仲良くなったの?」
「いやいや! 違う! 多分間違えたんだよ、きっとそう!」
「そう? だって森下さんって言ってたじゃん」
「そ、それは……」
しどろもどろになると、愛美ちゃんは不思議そうにした。
「もしかして、昨日なんかあったの?」
す、鋭い……!
「いやぁ、何もないよ〜。あはは」
「ふーん、そっかぁ。ま、友達が増えるのはいいことよ!」
そう言ってバシッと背中を叩かれる。
なんでこうなったんだろう。私があの時、もっと早くに気がついていれば……。
放課後の教室に一人きりでも、油断できないな……。
もう学校でマスク外すのやめよう……。
「……はぁ」
「なーに溜め息ついちゃって」
机に項垂れる私のほっぺたをツンツンと突く愛美ちゃん。
「ベーつに」
「絶対なんかあるじゃん」
「なーんもない」
「ってかさ果穂、今日日直じゃない?」
「あっ! 忘れてた!」
ガバッと起き上がって、私は急いで職員室へ向かった。
もう〜、晶くんに気を取られて忘れてた!
◇◇◇
職員室前。
なんだか大荷物を任されちゃった。
次の授業で使う大量の資料も教室まで持って行けって。
先生も人使い荒いなぁ。
「よいしょっ」
職員室は一階。一年生の教室は三階にあるから、これは力勝負の戦いになるぞ!
両手で抱えるように資料を持って、ゆっくり進んでいく。
「来たぞ階段……!」
強敵の階段は二回分ある。普段体育でしか運動しない私には、とんでもなくキツイ……。
「よし……!」
「手伝う?」
「わぁ‼︎」
急に声をかけられて驚いた私は、資料を全て落としてしまった。
「あーあ、やっちゃったね」
そう言って落ちた資料を拾うのは、晶くんだった。
「あ、晶くん……」
「手伝うよ。重いでしょ」
「あ、ありがと……」
私も晶くんと一緒になって資料を拾い始める。
「こんくらいなら全部持てそう」
拾い集まった資料を、晶くんはヒョイと軽々持ち上げた。
「私も少し持つよ……!」
「いーよ。平気だから」
「でも、日直の仕事だから……!」
「先生も人使い荒いな。こんな重いのを女子に持たせるなんて」
そう言って、晶くんは階段を登っていく。
私は、置いていかれないようにその後を追って横に並んだ。
「ありがとう、晶くん」
「別に。たいしたことじゃない、暇なだけ」
「でも、助かる……!」
「そ」
晶くんはいつものようにクールな表情を崩さない。
私の方を見向きもせず、スタスタと階段を登っていく。
「晶くん、昨日のことだけど……」
「別に他の人に言いふらしたりしない」
「ほ、本当?」
「ホント。言ってどうする」
「確かにそうだけど、それならよかった……」
昨日から思っていた考え事だった。
誰かに言ったりしないかって不安だった。
だからこそ、その言葉を聞いて胸を撫で下ろした。
「そんなこと不安だったの」
「当たり前だよ! だって、高校生活ではずっと隠したいって思ってたから……」
一階を登りきり、二階から三階までの階段を登り始める。
「別に隠すようなことじゃないと思ったけどな」
「でも、私にとってはコンプレックスだから……」
って、なんで晶くんにこんなこと言ってるんだろう。
言ったってしょうがないのに……。
「あ、あと、なんかお礼するよ! 重いのに持ってくれてありがとう! ジュースとかでいい?」
「別にいいよ、こんくらい気にしすぎ」
「そ、そっか……」
「じゃあさ」
そう言って晶くんはピタッと足を止める。
そして私を見つめてこう言った。
「マスクの下、もう一回見せて」
「へ……?」
「俺にだけでいいから、見せて」
予想外の言葉に、私の頭は大混乱した。
「……だ、ダメ‼︎」
私がそう言うと、晶くんは口をへの字に曲げた。
「そ、残念」
だけど、私の心臓はなぜかバクバクと落ち着かなかった。
晶くんは決して馬鹿にしているわけじゃないってわかっているから。
だからこそ、なんでそんなことを言うのかわからなかった。
晶くんは再び、スタスタと階段を登っていく。
私は、すぐに追いかけず、数秒立ち止まったままで、それからまた晶くんを追いかけた。
教室で愛美ちゃんとお喋りしていると、晶くんが教室に入ってきた。
「晶くんおはよ〜」
「おは」
愛美ちゃんはいつものように声をかける。
チラリと晶くんを見ると、バチっと目が合った。
「おはよ、森下さん」
「お、おはよっ……!」
声をかけられると思わなくて、思わず声が裏返ってしまった。
その様子を見て、ニヤリと微笑む晶くん。でもすぐにいつものクールな顔に戻って、自分の席へ向かっていった。
「果穂、晶くんと仲良くなったの?」
「いやいや! 違う! 多分間違えたんだよ、きっとそう!」
「そう? だって森下さんって言ってたじゃん」
「そ、それは……」
しどろもどろになると、愛美ちゃんは不思議そうにした。
「もしかして、昨日なんかあったの?」
す、鋭い……!
「いやぁ、何もないよ〜。あはは」
「ふーん、そっかぁ。ま、友達が増えるのはいいことよ!」
そう言ってバシッと背中を叩かれる。
なんでこうなったんだろう。私があの時、もっと早くに気がついていれば……。
放課後の教室に一人きりでも、油断できないな……。
もう学校でマスク外すのやめよう……。
「……はぁ」
「なーに溜め息ついちゃって」
机に項垂れる私のほっぺたをツンツンと突く愛美ちゃん。
「ベーつに」
「絶対なんかあるじゃん」
「なーんもない」
「ってかさ果穂、今日日直じゃない?」
「あっ! 忘れてた!」
ガバッと起き上がって、私は急いで職員室へ向かった。
もう〜、晶くんに気を取られて忘れてた!
◇◇◇
職員室前。
なんだか大荷物を任されちゃった。
次の授業で使う大量の資料も教室まで持って行けって。
先生も人使い荒いなぁ。
「よいしょっ」
職員室は一階。一年生の教室は三階にあるから、これは力勝負の戦いになるぞ!
両手で抱えるように資料を持って、ゆっくり進んでいく。
「来たぞ階段……!」
強敵の階段は二回分ある。普段体育でしか運動しない私には、とんでもなくキツイ……。
「よし……!」
「手伝う?」
「わぁ‼︎」
急に声をかけられて驚いた私は、資料を全て落としてしまった。
「あーあ、やっちゃったね」
そう言って落ちた資料を拾うのは、晶くんだった。
「あ、晶くん……」
「手伝うよ。重いでしょ」
「あ、ありがと……」
私も晶くんと一緒になって資料を拾い始める。
「こんくらいなら全部持てそう」
拾い集まった資料を、晶くんはヒョイと軽々持ち上げた。
「私も少し持つよ……!」
「いーよ。平気だから」
「でも、日直の仕事だから……!」
「先生も人使い荒いな。こんな重いのを女子に持たせるなんて」
そう言って、晶くんは階段を登っていく。
私は、置いていかれないようにその後を追って横に並んだ。
「ありがとう、晶くん」
「別に。たいしたことじゃない、暇なだけ」
「でも、助かる……!」
「そ」
晶くんはいつものようにクールな表情を崩さない。
私の方を見向きもせず、スタスタと階段を登っていく。
「晶くん、昨日のことだけど……」
「別に他の人に言いふらしたりしない」
「ほ、本当?」
「ホント。言ってどうする」
「確かにそうだけど、それならよかった……」
昨日から思っていた考え事だった。
誰かに言ったりしないかって不安だった。
だからこそ、その言葉を聞いて胸を撫で下ろした。
「そんなこと不安だったの」
「当たり前だよ! だって、高校生活ではずっと隠したいって思ってたから……」
一階を登りきり、二階から三階までの階段を登り始める。
「別に隠すようなことじゃないと思ったけどな」
「でも、私にとってはコンプレックスだから……」
って、なんで晶くんにこんなこと言ってるんだろう。
言ったってしょうがないのに……。
「あ、あと、なんかお礼するよ! 重いのに持ってくれてありがとう! ジュースとかでいい?」
「別にいいよ、こんくらい気にしすぎ」
「そ、そっか……」
「じゃあさ」
そう言って晶くんはピタッと足を止める。
そして私を見つめてこう言った。
「マスクの下、もう一回見せて」
「へ……?」
「俺にだけでいいから、見せて」
予想外の言葉に、私の頭は大混乱した。
「……だ、ダメ‼︎」
私がそう言うと、晶くんは口をへの字に曲げた。
「そ、残念」
だけど、私の心臓はなぜかバクバクと落ち着かなかった。
晶くんは決して馬鹿にしているわけじゃないってわかっているから。
だからこそ、なんでそんなことを言うのかわからなかった。
晶くんは再び、スタスタと階段を登っていく。
私は、すぐに追いかけず、数秒立ち止まったままで、それからまた晶くんを追いかけた。