想いを伝える人 ~天命に導かれる旅~ 【新編集版】
 妻はチャーハンと餃子を、わたしは春巻きと八宝菜と酢豚と生ビールを頼んだ。

 生ビールはすぐに運ばれてきた。
 一口目は妻が飲んだ。
「やっぱりおいしいわね」と顔を綻ばせたものの、それ以上は飲まなかった。
 匠に手がかかっている間は控えるつもりなのだろう。
 わたしは妻から受け取ったジョッキに口を付けてゴクゴクと半分ほど飲んだが、余りのうまさに思わず「あ~」という声を漏らしてしまった。
 それでもビールだけをひたすら飲むわけにもいかないので厨房の様子をちらちらと見ていると、切れ目なく入る注文にてんてこ舞いしているかと思いきや、一定のリズムでてきぱきとこなしていた。
 父親が息子に的確な指示を出しているのだろう、次々に料理が出来上がっては運ばれていった。
 
 しばらくして注文した5皿が間を置かずに運ばれてきた。
 どういう段取りで作っていたのだろうか? 
 別々の料理を僅かな時間差で作り上げる技に感心した。
 
 匠に食べさせながら自分も食べ終わった妻は杏仁豆腐(あんにんどうふ)を注文して「お酒は我慢してもデザートはね」と意味深な視線を投げてきたので、〈別に言い訳をしなくても〉と言いそうになったがぐっと堪えて頷いた。


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