想いを伝える人 ~天命に導かれる旅~ 【新編集版】
「入るわよ」
「どうぞ」
妹がドアを開けた。
オフクロはお盆にお茶を乗せて持ってきていた。
机の上に茶碗を二つ置いて出て行こうとすると、「お母さんにも聞いて欲しいの」と妹が止めた。
そして自分の横に手を置くと、オフクロは頷いて妹の横に座った。
「今日、お兄ちゃんの会社に行ったの」
わたしは頷いた。
「会社の人から話は聞いた?」
「うん、聞いた。びっくりした」
それは、宮大工の仕事を世間に広く知らしめるためのホームページ作成という依頼だった。
「お兄ちゃんが仕事を辞めるかどうか悩んでるってお義姉さんから聞いて、そんなことはさせてはいけないと思ってお父さんに相談したの。そしたらね」
オフクロの方を向いて頬を緩めた。
「仕事として頼めって言ったの」
「オヤジが?」
「そう。それくらいの金は出してやるって言ってくれたの」
わたしはうまく反応ができず、黙ったまま次の言葉を待った。
「あいつも苦労してやっと今の仕事に就いたんだし、それにちゃんとやっているみたいだから応援してやらないとなって、そう言ったの」
オヤジが……と思うと、高校3年の時に対峙した厳しい顔が頭に浮かんできた。
鋭い眼光の奥に絶望のようなものが浮かんでいた顔だった。
あんなに酷いことをしたのに……、
居たたまれなくなって妹から目を逸らした。
「どうぞ」
妹がドアを開けた。
オフクロはお盆にお茶を乗せて持ってきていた。
机の上に茶碗を二つ置いて出て行こうとすると、「お母さんにも聞いて欲しいの」と妹が止めた。
そして自分の横に手を置くと、オフクロは頷いて妹の横に座った。
「今日、お兄ちゃんの会社に行ったの」
わたしは頷いた。
「会社の人から話は聞いた?」
「うん、聞いた。びっくりした」
それは、宮大工の仕事を世間に広く知らしめるためのホームページ作成という依頼だった。
「お兄ちゃんが仕事を辞めるかどうか悩んでるってお義姉さんから聞いて、そんなことはさせてはいけないと思ってお父さんに相談したの。そしたらね」
オフクロの方を向いて頬を緩めた。
「仕事として頼めって言ったの」
「オヤジが?」
「そう。それくらいの金は出してやるって言ってくれたの」
わたしはうまく反応ができず、黙ったまま次の言葉を待った。
「あいつも苦労してやっと今の仕事に就いたんだし、それにちゃんとやっているみたいだから応援してやらないとなって、そう言ったの」
オヤジが……と思うと、高校3年の時に対峙した厳しい顔が頭に浮かんできた。
鋭い眼光の奥に絶望のようなものが浮かんでいた顔だった。
あんなに酷いことをしたのに……、
居たたまれなくなって妹から目を逸らした。