想いを伝える人 ~天命に導かれる旅~ 【新編集版】
 目を付けたのはバイオファーマだった。
 バイオテクノロジーによって医薬品を開発するベンチャー企業だ。
 その会社はインフルエンザ用のワクチンを開発していた。
 それは今までにない作用メカニズムを有する新型のワクチンで、その高い有用性に注目した大手製薬企業とライセンス契約を結んでいた。
 今は臨床試験の最終段階が終わり、当局への申請中となっている。
 次のステップは承認だ。
 承認されて発売されればかなりの売上が見込めるようだ。
 そうなればこのバイオファーマに多額のロイヤルティが入ってくる。
 その情報がリリースされれば株価は跳ね上がる。
 何十パーセントというレベルではない値上がりが期待できるかもしれない。
 世の中には、テンバガーと呼ばれる株価が10倍にまで跳ね上がった銘柄が少なからず存在するのだ。
 このバイオファーマもそうなるかも知れない。
 そう考えると、いやがうえにも期待が膨らんだ。
 すると居ても立ってもいられなくなった。
 すぐに保有しているすべての株を売って、それを元手に600万円の保証金を証券会社に入金した。
 そして、保証金の2倍の金額、1,200万円をつぎ込み、このバイオファーマの株を買った。
 
 勝負だ!
 
 わたしは気合を入れた。
 
 
< 14 / 154 >

この作品をシェア

pagetop