想いを伝える人 ~天命に導かれる旅~ 【新編集版】
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 初出社の朝を迎えた。
 カーテンを開けると、空はどんよりと曇っていた。
 今にも雨が降りそうな気配だった。
 
 門出の日くらい晴れてくれてもいいのに……、
 
 空に向かって恨み言を投げたが、空は黙ったままわたしを見つめていた。
 
 ま、雨さえ降らなければいいか、
 
 気持ちを切り替えて、寝袋を折り畳んだ。
 それから流しで顔を洗い、歯磨き粉を付けずに歯を磨いてから、ちゃぶ台の前に座った。
 
 朝食は昨夜スーパーの総菜コーナーで買った〈豚のロースかつ重+讃岐うどんセット〉だった。
 電子レンジがないので冷たいまま食べたが、贅沢過ぎる朝食に心が躍った。
 
 食べたあとのごみを片付けてから歯磨き粉をつけて念入りに歯を磨いていると、腸が動き出した。
 慌ててトイレに入ると、するりと気持ちの良いお通じがあった。
 爽快感に包まれてしばらく動くことができなかった。
 
 晴れやかな気分になったわたしはおニューのジャケットとパンツに着替え、手鏡を動かして全身をチェックした。
 悪くなかった。
 なかなか(さま)になっていると思った。
 その後、手鏡に顔を映して笑顔の練習を二度行った。
 そして、右手にビニール傘を持って、左手でアパートのドアを開けた。
 
 
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