ポリスに恋した

玲於サイド

「最近、高速道路を爆音で走るバイクがうるさくて眠れないといった相談や、危険な運転で事故の手前だったなどの相談が相次いでいる。そこで、暴走族の取り締まり強化を実施するとともに、道路交通法第68条、共同危険行為等の禁止違反に則り、検挙することも検討にいれることとする」

暴走族、か。

ここ最近、深夜の暴走行為が激しさを増しているからな。

近隣住民の迷惑になるだけではなく、1歩間違えれば大事故に繋がる可能性もある。

死亡者が出ることなんて、絶対にさせたくないー。

父さんは、俺が小学3年生の夏に交通事故で亡くなった。

職場から帰宅中に、集団で走るバイクと遭遇した。

そして、そのバイクが父さんの車に近づいてきた。

事故に繋がると思った父さんは、そのバイクを避けようとハンドルを切り、高速道路のフェンスにぶつかり即死した。

高速道路のためスピードもかなり出ているから、怪我では済まなかった。

母さんも俺も、すごくショックを受けて一時期は酷い栄養失調に陥った。

そんな時に俺たちの支えになってくれたのが、交通捜査課の1人の警察官だった。

俺たちのことを気にかけてくれて、俺が子供だったこともあってよく会いに来てくれた。

そのおかけで、母さんは少しづつ前を向くことができた。

そして、母さんが1人で俺を育ててくれたおかげで俺は今警察官としてここにいることができている。

母さんには、感謝しかない。

そして、あの警察官にも。

このことがきっかけで、犯罪のない世の中にしたいと警察官を目指し始めたのだ。

だから、俺にとって暴走族は宿敵でもあり、警察官になった原動力でもある。

なんとしても、事故なく検挙したいところだ。

そして、現在時刻は午後22時49分。

暴走行為のピークは午後23時から翌早朝にかけて。

そのため、現在パトカーで待機中だ。

暴走族は若者が多く、日々の鬱憤を晴らすために行っていることが多い。

中には、偏差値の高い学校に通う生徒が勉学のストレスから行っていることもある。

大人たちが、子供の日頃の様子をしっかりと見ていてあげることが大切だと俺は思っている。

誰かの命を奪ってしまう前に、暴走行為を辞めて欲しいと強く願う。

犯罪というのは、殺されてしまったり心に傷を負ってしまった本人だけではなく、家族や友達など周囲の人間にも大きな影響を及ぼす。

それが、俺には嫌というほど実感として残っているから。
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