戦略的恋煩い
「な、なんで?」

「小夏のこと結構タイプかもしれない。俺と付き合ってほしい」


 断定ではなく推量で告白されたのは初めてだった。不確かな気持ちではますます不安が募る。距離を取るためにベッドの上で後ずさる。しかし律輝はベッドに乗ってくると、壁際に追い詰めて私の頬に触れた。

 マジで誰?めっちゃグイグイ来るじゃん。そして言動が変則的すぎて何考えてるか全然分からない。

 そもそも、私と付き合う発想がこの男の脳内にあるとは微塵も思っていなかった。


「嫌なら潔く振って。ただの隣人に戻ろう」


 あっちこっちに目を泳がせて返答に困っていると、律輝は少し悲しそうな目をして視線を外した。

 ねえ、ずるいってばその表情!いつもの冷静沈着能面フェイスはどうした!?


「考えさせて、ください……」

「いいよ、意識してくれただけで」


 母性を刺激され、たまらず保留の意志を伝えると、律輝は満足そうに口角を上げて私の頭を撫でた。
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