戦略的恋煩い
 律輝の車は、高級車に分類される海外メーカーのセダン型だった。26歳の割に稼いでるんだな、なんの仕事してるんだろうと考えながら車に揺られて家から10分くらいで職場についた。

 「すぐ戻ってくる」と走って建物に入る。今日はたまたま土曜出勤の人がいて助かった。予想通りデスクの上に鍵を置きっぱなしにしていた私は、安堵のため息とともに律輝の車の中に戻った。


「鍵あった?」

「お騒がせしました、ありました」

「良かったね」


 ため息をつく私を横目に車を発進させた律輝。しばらくして前を見ながら口を開いた。


「ちょっと早いけど昼メシ食べに行く?小夏お腹空いてる?」

「律輝はお腹空いてる?」

「普通」


 普通って難しいな、そこまでお腹すいてないって解釈でいいんだろうか。時刻は11時。私は明け方まで飲んで食べてたからあまりお腹空いてない。食べられないほどお腹いっぱいじゃないけど、外食するなら着替えたいしメイクをやり直したい。


「その前に一旦家に帰りたいんだけど大丈夫?」

「いいよ、俺も小夏の部屋行きたいと思ってた」


 いいよと言ってくれて安心したけど、あとに続く言葉に驚いて律輝を二度見した。
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