戦略的恋煩い
 私の部屋は、白を基調とした家具に天蓋付きのベッドが置いてある。正直アラサーで少女めいた趣味を持っているのはさすがに痛い。分かっているけど、昔からこういう女の子らしい部屋に憧れていたから模様替えはしないつもり。


「よし、着替えた。15分で終わらせるからちょっと待ってて」

「ゆっくりでいいのに」


 仕事着からささっと着替えて律輝がいるキッチンに向かうと、律輝は私の後をついてまわるように狭い洗面所に並んだ。

 表情変わらないところが猫っぽいと思ったら、ぴとっとくっついてきて犬っぽいし、この人本当に読めない。基本的に塩対応だけど、いろんな一面があるから一概にクールだとは言えない。

何を考えているんだろう、ちらっと見上げてその顔を見ると、律輝は不意に私が履いているマーメイドスカートを掴んだ。


「このスカート、俺好き」

「こういうの好きなんだ」

「体のラインが出る感じが女の子らしくていい。小夏に似合う」


 ほら、やっぱり何考えてるか分からない。“女性の服なんて脱がせりゃ一緒”とか言いそうなのに、ちゃっかりおべっかを使うんだから。本心なのかもしれないけど、とどのつまり惑わされっぱなしで調子が狂う。


「律輝、やりづらい。圧が強い」

「化粧する姿ってなんとなく目で追ってしまう」


 切り替えてメイクをしようとしても、鏡越しに私に熱視線を向ける律輝と目が合って気が散る。でも正直、恋人未満なこういう時間って楽しい。

 心地いい緊張感を持ちつつ、あたかも恋をしているような錯覚を味わうのは久しぶりだった。
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